オゾンの危険性と濃度管理の重要性
しかし、消臭について調べるため様々なサイトを巡っていると数か月前くらいから家庭用オゾン発生器販売サイトの広告をよく見るようになりました(ほとんど一社)
私は国民生活センターと全く同じ理由で家庭用オゾン発生器には否定的な考え方をしているので商品について調べてみることにしました。ちなみにオゾンについての高度な専門知識を持った企業によって指導を受けた上で業務用・産業用としてオゾン発生器を利用する事は全く問題はないと思っています。
とりあえずと思い広告を出していた企業HPを見た私はオゾンに対するQ&Aを見て愕然としました。文章も酷かったですが中身も同じくらい酷かったです(文章を考えた人は間違いなく理系の人間ではないと思う)
まずオゾン濃度の計測についてですが、生体へのオゾンの影響は非常に大きい為、オゾンに対してある程度の知識がある人間は空気中のオゾン濃度を最も重要視し、オゾン濃度計やガス検知管によってオゾン濃度を測定します。
①許容できる濃度は個人差があり、全ての人に当てはまるとは限らない(特に乳幼児・老人)。
②オゾン濃度計やガス検知管が無いと、オゾン濃度は測定出来ないこと。つまり低濃度であるかどうかは感覚ではわかりません。
③局所的に高濃度になってしまう箇所があり、全ての空間で均一に濃度が一定しているとは限らないこと
大原則!オゾンは有人空間で使用してはいけません < 失敗しないオゾン脱臭機選び | オゾン総合ホームページ O3webから
<生体へのオゾンの影響>
空気中濃度 | 影 響 |
---|---|
0.01ppm | 敏感な人の嗅覚閾値 |
0.01~0.015ppm | 正常者における嗅覚閾値 |
0.06ppm | 慢性肺疾患患者における嗅気能に影響ない |
0.1ppm | 正常者にとって不快、大部分の者に鼻、咽喉の刺激 |
(労働衛生的許容濃度) | |
0.1~0.3ppm | 喘息患者における発作回数増加 |
0.2~0.5ppm | 3~6時間暴露で視覚低下 |
0.23ppm | 長期間暴露労働者における慢性気管支炎有症率増大 |
0.4ppm | 気道抵抗の上昇 |
0.5ppm | 明らかな上気道刺激 |
0.6~0.8ppm | 胸痛、咳、気道抵抗増加、呼吸困難、肺のガス交換低下 |
0.5~1.0ppm | 呼吸障害、酸素消費量減少 |
0.8~1.7ppm | 上気道の刺激症状 |
1.0~2.0ppm | 咳嗽、疲労感、頭重、上部気道の乾き、2時間で時間肺活量の20%減少、胸痛、精神作用減退 |
5~10ppm | 呼吸困難、肺うっ血、肺水腫、脈拍増加、体痛、麻痺、昏睡 |
50ppm | 1時間で生命の危険 |
1000ppm 以上 | 数分間で死亡 |
6,300ppm | 空気中落下細菌に対する殺菌 |
上の表を見ればオゾンの濃度管理がいかに繊細なものであるかが分かると思います。
しかし、私が見たオゾン企業のQ&Aには「濃度を計測する機材は皆持ってないはず。だからオゾンの濃度はオゾン臭で判断する。オゾン独特の臭いがすれば高濃度だ」と書いてありました。
オゾンの専門家がこれを見たら飛び上がって驚くだろうと思いました。異常としかいいようがありません。
オゾンの濃度を鼻で計測することは100%不可能です。0.01ppm単位の僅かな違いが分かる人間は存在しません。
さらにオゾンによって嗅覚細胞が麻痺してしまい正常時のように臭いを感じとれない可能性もあり、嗅覚に頼ることは非常に危険なのです。
太田[3]の著書によれば,悪臭物質とオゾンの反応は緩慢で,1ppmの硫化水素を同濃度のオゾンで反応させた場合の半減期は約150時間と長く,悪臭空気にオゾンを吹き込んでも悪臭物質は瞬時にはほとんど分解されない.
オゾンの自己分解速度(半減期)は,大気中で数~10数時間といわれるので,その間に悪臭物質は時間をかけ徐々に一部分が分解されるものと思われる.
我々がオゾン発生直後の室内に入り臭いが消えたと感ずるのは,オゾンそのものが嗅覚細胞を麻痺させて人体に有害な“臭覚麻痺に基づく無臭効果”が得られることも一因と予測される.
オゾン脱臭に伴う危険性について|公益社団法人 日本獣医師会より
上の引用文でも「悪臭物質とオゾンの反応は緩慢な(遅い)為、悪臭物質を分解・消臭するのには非常に時間がかかる。オゾンによって消臭できていると思うのはオゾンによって鼻の粘膜が酸化され麻痺した事によって起こる”臭覚麻痺に基づく無臭効果”も一因」としています。
これでもまだ臭いによってオゾンの濃度が分かると思う人はいるでしょうか。普通に考えれば不可能なことが分かると思います。
その他のQ&Aも首をかしげるようなものばかりでしたが、極めつけは犬に対するQ&Aでした。
まずオゾン発生器を利用する上で最も重要なことは「ヒトや大切な動物がいる場所で絶対にオゾン発生器を使わないこと」です。これはオゾン発生器を使う上で絶対の決まりごとなのです。
しかしこの企業は「オゾン濃度があまり高くならないように調整しながら使ってもよい」と説明しているのです。調整方法も何分放出何分待機というような非常にアバウトなものです。
オゾンの恐ろしさのひとつが急性・慢性双方の中毒症です。急性中毒ならすぐに症状が出るので分かりますが、慢性の中毒症は低濃度でも起こり少しずつ神経や呼吸器に異常が出てきます。
ヒトならば体調の悪さを訴える事もできますが、物言わぬペットにはそれができません。よってオゾン発生器を使用する場合、ヒト以上にペットには注意が必要なのです。
2009年の国民生活センターの一件があって以来、オゾン発生器販売サイトは一様に有人下(ヒトやペットがいる状況)で製品を使用してはいけないという注意文を入れるようになりました。
当該企業も注意文は記載していましたが、なぜこのように矛盾の生じたアドバイスをするのか私には全く理解できません。